うたとはるの往復書簡『お茶席のマナー』

読者のみなさん、こんにちは。うたです。
これから書人のはるさんと私、うたの共通の趣味を文通形式ででお送りするシリーズを始めることとなりました。
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日本文化に深く通じる月齢を意識して、満月ごとの更新とさせていただこうと思います。
今回は記念すべきシリーズ初回を、私うたが担当させていただきます。
私からはるさんへ差し上げたお手紙をご紹介しますね。
長かった梅雨も明け、蝉時雨がそこここで聞かれるようになってきましたね。
暑さも日に日に厳しくなって参りましたがいかがお過ごしですか?
コロナの影響で、最近はお茶席も開かれなくなってしまいましたね。
お席をお手伝いするたびに、お茶席の設えを見て季節を強く感じていたので、とても残念でなりません。
私はよく市町村の行事のお席のお手伝いに入っていたのですが、そこでたびたび聞かれる言葉があるんです。
「お作法も何もわからないから・・・。」
みなさんが気軽にお越しいただけるのが市町村行事のお茶席の良さなのに、やはりお茶席ということで堅苦しく感じられるのでしょうか。
お迎えする側としては、お作法は重要ではなく、お茶席そのものの雰囲気を楽しんでいただければといつも思っています。
そこで、お作法について少しお伝えする機会があればなぁと思った次第です。
はるさんのご意見もぜひお聞きしたいです。
お茶席での服装と持ち物
お茶席にどんな服を着ていけばいいのかわからない。
何を持って行けばいいのかわからない。
お茶席が初めての方はきっとそこから悩まれるのだと思います。
これも言い出したらきりがないのですが、お客様としてお席に入られるにあたって最低限必要なことを押さえておけばいいのではないかな、と私は思っています。
服装
お茶席に適した服装は、キレイめのワンピースやスカートスタイルですよね。
正座をした時に膝が見えない方が美しいので、丈感は膝下かもう少し長いと安心です。
もちろん着物だとより良いですが、無理に着ていくと上座に通されたりして困惑してしまうかもしれません。
時々生足、素足のお客様もお見掛けしますが、ストッキングや靴下を着用するのがマナーですね。
あと、アクセサリーはお道具を傷つけてしまう可能性もあるのでNGです(結婚指輪もできれば外しましょう)。
持ち物
持ち物はお茶をいただくにあたって、必要最低限の物をこちらに書いてみますね。
- 懐紙(かいし)
- 楊枝(ようじ)
- 扇子(せんす)
- 数寄屋袋(すきやぶくろ)(帛紗はさみでも構いません)
- 帛紗(ふくさ)
- 古帛紗(こぶくさ)
私がよくお手伝いに入るような市町村主催のお茶席なら、みなさんに来ていただきやすいように楊枝も懐紙もご用意しています。
みなさんに開かれたお茶席なら、古帛紗が必要なお点前も選択されないでしょう。
ご紹介したのはお茶の基本セットですが、ふと立ち寄るカジュアルなお茶席なら、扇子があれば足りるのかな、というのが私の感覚ですがはるさんはどう思われますか?
ちなみに扇子は写真のように右側に留め部分が来るように使います。
お茶席を楽しむ手順
お茶席はお茶室に入るところから始まります。
大人数でのお茶席であればあるほど、お作法は簡略化されていて、初めての方にも参加しやすいですよね。
簡単にお茶席でのお客さんの流れについて書いてみました。
- 入室
- お床や炉の拝見
- 着座
- ご挨拶
- お菓子をいただく
- お茶をいただく
- お道具の拝見
- ご挨拶
- 退室
私がよくお手伝いに入るお茶席では、2と7は興味のある方だけお席の前でも後でもご覧いただいています。
茶道は流派があり、それぞれに独自の手順がありますが、この基本を押さえておけば大丈夫です!
流れの一つ一つを詳しく見てみましょう。
1.入室
- 畳に座るお席なら襖は座って開ける(椅子座なら立って開ける)
- お扇子を前において、入室前に一礼
- お扇子を前に進めながら、にじって入室
現代では襖を改まって開けることも少ないですよね。
にじって入室することなんかもそうだと思います。
だからこそ、この流れがこれからお茶席が始まる期待感を上げてくれると思いませんか?
2.お床や釜の拝見
これは、かしこまらずに参加できるお茶席では省略されることが多いですね。
もちろん、興味があればぜひ拝見していただきたいです。
拝見はお床(床の間)の掛け軸とお花、釜という順で拝見します。
拝見の時には、お扇子を置いて、挨拶するように手をついて拝見します。
ここまでの1と2を一つにした動画を見つけたので、添付しますね
引用:You Tube
3.着座
着席する時は、上座は避けた方がいいですよね。
お正客さん(一番上座のお客様)は、お茶席の流れを把握していないと難しいですので、私はお稽古の時にお正客さん役をするだけで緊張してしまいます。
お茶の世界では年齢や立場、性別によって、お正客さんが決まります。
初めてのお茶席では、真ん中以降の席で様子を見るのが無難ですね。
また、お詰(末席)も役割がある場合があるので、こちらも茶道経験者でないと難しい場合がありますよね。
4.ご挨拶
ご挨拶はお点前(てまえ)が始まってから、半東(はんとう)さん(お席のおもてなしを担当する役割)が、お正客さんと一対一でご挨拶をされます。
それが終わったら、お席のみなさんに向けてのご挨拶があるので、お扇子を前に置いてお辞儀をしましょう。
5.お菓子をいただく
お茶でお菓子をいただくとなると、よくいらっしゃるのがお菓子をいただきながらお茶もいただく方です。
そのようにいただくのが一番おいしいいただき方だと、実は私も心ひそかに思っています。
でもお茶席では、お菓子はお菓子だけ、お茶はお茶だけでいただくのがお作法です。
大勢さんでのお席なら、必ず自分のお茶が点ちますし、「お点て出し」といって奥の水屋からすでに点てた薄茶を運んでくる形になる場合がほとんどです。
なので、自分のお茶が点ちそうかどうかを判断せずにお菓子を取り回ししてしまいます。
手順は次のような感じですね。
- 菓子鉢が一つ上座の人に回ってきたら、一つ下座の人に「お先に」と一礼しておく
- 上座の人と自分の間に菓子鉢が置かれるので、自分の正面に持ってくる時に、少し掲げて「感謝」する
- 数寄屋袋から懐紙と楊枝を取り出す
- 黒文字(お箸のようなもの)を上から取り、左手を添えてお箸を持つように持ち変えて、お菓子を懐紙の上に取る
- 懐紙の端で黒文字の先を拭って、元の通りに菓子鉢に渡す
- 下座の人と自分の間に菓子鉢を置く
- お正客さんのお声がかかる、もしくは全員に菓子がいきわたったころを見計らってお菓子をいただく
こちらも参考になる動画を添付しますね。
子どもが茶道をしていると、ほほえましくて嬉しくなりますね。
引用:You Tube
6.お茶をいただく
お茶をいただく作法は次のような感じですね。
- まず畳の縁の内側、上座の人との間にお茶を置いて「お続きは?」と尋ねる
- 「結構です」とお返事があったら、下座の人との間にお茶を置いて「お先に」と挨拶する
- 自分の膝前に置いて「お点前頂戴いたします」と一礼する
- お茶碗を軽く掲げて感謝し、時計回りに2回お茶碗を回して正面を避ける
- 3回半で飲み切る
- 口を付けた部分を指で拭って、汚れた指を懐紙で清める
- お茶碗を反時計回りに2回回して、正面を元の位置に戻す
- 畳の縁の外側にお茶碗を置いて、拝見する
2ではもちろん「頂戴します」とお返事がある場合もあります。
みなさん意外に思われますが、お茶席では、満足頂くまでお茶でおもてなしをするのでおかわり自由ですよね。
言い出すのには勇気がいるので、おかわりする方はなかなかいらっしゃいませんが(笑)
こちらも参考になる動画がありました。
引用:You Tube
7.お道具の拝見
お道具は、正式にはお客様の席に回して拝見します。
でも、大勢のお席だと、お席が終わってから飾られているものを拝見する形になることも多いですね。
拝見する時には、高く掲げたりせず、必ず肘を膝に固定して持ち上げるなどの配慮が必要ですね。
拝見する時は、お床や釜を拝見する時と同じく手をついて拝見しましょう。
8.ご挨拶
お点前が終了したら、半東さんとお点前さんとで一言だけご挨拶があります。
これでお茶席は終了したという合図になります。
9.退室
退室は入室の全く逆回しですね。
一度拝見したお床も、お席の最中に半東さんから内容の説明があった後に拝見すると、また別の感じ方ができます。
手順としては次の順ですね。
- 釜の拝見
- お床の拝見
- にじって退室
こちらも動画をご紹介しますね。
引用:You Tube
脚が痺れた!お茶席でのトラブル回避
お茶席でずっと正座でいることに不安を感じている方も多いですよね。
私たちのように正座に慣れていたら、あまりしびれなくもなってくるのですが、お茶席にあまりなじみのない方は「脚がしびれてしまったらどうしよう」と感じてしまうのも頷けます。
私もお稽古中、あまりに長い間座り続けている時に足がしびれてくることがあります。
そんな時の回避方法を、ぜひ実践していただいて、不安を取り除いてけたらなと思います。
足を外側へ向ける
お茶席で脚を崩すのは憚られますよね。
それでもしびれたままでは退席もできません。
そんな時、私は足を外側へ向けることで解消しています。
正座をする時は足はお尻の下にありますよね。
それを足を外側へ向けるようにして、お尻の圧迫から逃がしてやるんです。
しびれきってからでは遅いですが、しびれに気付いてすぐにやってみるとかなりしびれが軽減できますよ。
足を立てる
足を外側へ向けるだけではしびれが解消できない時には、足を立てるのがおすすめです。
正座から立ち上がる時に足の指だけを床に付けて、かかとにお尻を付けますよね。
この姿勢をすると足を外側へ向けるよりも、早くしびれが改善されます。
少し座る姿が高くなってしまいますが、足を崩してしまうよりも美しくしびれが逃がせます。
『お茶席のマナー』おしまいに
お茶席に慣れていない方のマナーについて、知っておくと怖がらずにお茶席を楽しめる内容を書いてみました。
お茶席での服装
- キレイめのワンピースやスカートスタイル
お茶席への持ち物
- 懐紙
- 楊枝
- 扇子
- 数寄屋袋(帛紗はさみでも構いません)
- 帛紗
- 古帛紗
お茶席を楽しむ手順
- 入室
- お床や炉の拝見
- 着座
- ご挨拶
- お菓子をいただく
- お茶をいただく
- お道具の拝見
- ご挨拶
- 退室
痺れた脚を改善する方法
- 足を外側へ向ける
- 足を立てる
でも、そこにあるのは堅苦しい決まり事ではなくて、おもてなしの心ですよね。
季節感やお客様の居心地の良さを何よりも大切にしていることを、もっと広く知ってほしいと私は常々考えています。
はるさんも、きっと私以上に感じていらっしゃるのではないでしょうか?
茶道とは切り離すことができない和菓子も、もっと知っていただいて、その意匠の素晴らしさをみなさんにも感じていただきたいです。
今年は日本の夏の風物詩である花火や夏祭りが中止になって、寂しい限りです。
まだまだ暑さも厳しい日が続きますが、どうぞお元気で。
ではまた、9月2日の次の月の満ちるころに。
かしこ
うた
▼うたとはるの往復書簡シリーズ
第1回『お茶席のマナー』 uta
第2回『お茶会のお菓子』haru
第3回『観月』uta
第4回『お茶の流派』haru
第5回『歴史の中の茶道の役割とは?』uta
第6回『茶道と日本の伝統文化の未来』haru