経営者の方とお話ししていると、ときどきこんな話を聞きます。
「広告から見込み客は集まっているんです。でも、なかなか商談につながらなくて」
「LINEやメルマガの登録者数は増えました。でも、商品を案内すると反応が薄いんです」
集客そのものは、うまくいっている。登録者数も増えている。広告の数字も悪くない。
「リスト数が増えたのに、売上が増えない」その理由
それなのに、売上だけが思うようについてこない。
この状態になると、多くの企業では「もっと集客しよう」という方向に目が向きます。
- 広告費を増やす
- 登録特典を改善する
- SNSの投稿数を増やす
- 新しい媒体を試す
もちろん、それらが必要な場合もあります。
ただ、その前に一度立ち止まって考えたいことがあります。
そもそも、いま集めている「見込み客」とは、どんな人なのでしょうか。
リスト数が増えても売上が増えないときは、人数だけでなく「どんな見込み客が集まっているのか」を見直す必要があります。
「人数」と「見込み度」は、同じ数字ではない
見込み客リストを考えるとき、登録者数は非常に分かりやすい指標です。
100人より1,000人。
1,000人より10,000人。
数字が増えていけば、事業が前進しているように見えます。
ところが、ここには少し注意が必要です。
「登録した人の数」と「自社の商品・サービスを必要としている人の数」は、別のものだからです。
たとえば、経営改善のコンサルティング会社が無料レポートを配布するとします。
タイトルが、
「経営者なら知っておきたい、今すぐ使える仕事術50選」
だったとしましょう。
たしかに、多くの人が興味を持つ可能性があります。
しかし、その中には経営改善を考えている人だけでなく、
- 無料だから読んでみよう
- 仕事に役立つかもしれない
という人も含まれます。
一方で、
「従業員30〜100名の企業で、管理職不足に悩む経営者向け・組織改善チェックリスト」
であれば、登録者数は少なくなるかもしれません。
ただし、そのテーマに現在困っている人が集まりやすくなります。
ここで重要なのは、
「どちらが多く集まるか」
ではなく、
「どちらが自社の顧客になる可能性を持っているか」
という視点です。
見込み客リストは「入口」で設計される
これはマーケティングの構造として考えると、比較的分かりやすくなります。
商品が売れるまでには、複数の段階があります。
- 認知する
- 興味を持つ
- 自分に関係があると感じる
- 課題を認識する
- 解決方法を検討する
- 相談・購入する
ところが、集客だけを切り取ると、
「何人登録したか」
という最初の数字だけが目立ちます。
すると、登録単価が安いことが成功のように見えてきます。
たとえば、広告費10万円で1,000人が登録したとします。
1人あたり100円です。
一見すると、とても良い数字に見えます。
では、その1,000人のうち、実際に商談になったのは何人でしょうか。
購入したのは何人でしょうか。
さらに、そこから得られた粗利はいくらでしょうか。
ここまで見ると、評価は変わるかもしれません。
逆に、広告費10万円で100人しか登録しなかったとしても、その100人から10件の商談が生まれ、2件の契約につながったなら、経営上はこちらの方が健全な場合があります。
つまり、
「1件の登録をいくらで取れたか」
だけではなく、
「1件の顧客を獲得するまでに、いくらかかったか」
まで見る必要があります。
登録単価が安いことだけで判断すると、事業への貢献度を見誤ることがあります。見るべきなのは、登録後に商談や契約へつながっているかです。
無料であることより、「誰の問題を解決するか」
では、見込み客の質はどこで変わるのでしょうか。
一つ大きいのが、登録時に渡す情報やコンテンツです。
いわゆるリードマグネットですね。
ここでありがちなのが、
「とりあえず役立つものを作ろう」
という発想です。
- チェックリスト
- 動画講座
- ノウハウ集
もちろん、これらが悪いわけではありません。
問題は、「誰にとって、どんな問題を解決するものなのか」が曖昧なまま作られているケースです。
たとえば、税理士事務所が、
「経営に役立つ情報10選」
という資料を配布するとします。
幅広い人が興味を持つかもしれません。
しかし、
「社員10〜50名の企業が、利益を残しながら設備投資を行うための資金繰りチェックリスト」
であれば、対象者はかなり限定されます。
登録者数は減る可能性があります。
でも、そのテーマに悩んでいる経営者にとっては、情報の意味が変わります。
ここに「量」と「適合性」の違いがあります。
良いリードマグネットとは、単に情報量が多いものではありません。
「これは自分の問題について書かれている」
と感じられるものです。
商品と見込み客をつなぐ「一貫性」
もう一つ重要なのが、無料で提供する情報と、有料商品とのつながりです。
ここが分断されていると、登録者は増えても商談にはつながりにくくなります。
たとえば、採用支援会社が「SNSでフォロワーを増やす方法」という資料を配ったとします。
その資料に興味を持って登録した人が、採用そのものには困っていなかったらどうでしょう。
後から、
「採用支援サービスをご利用になりませんか」
と案内しても、話が急に変わったように感じられるでしょう。
一方で、
「採用媒体から応募が来ない企業のための、求人原稿改善チェックリスト」
であれば、その情報を求めている人と、採用支援サービスを必要としている人の間に一定の重なりが生まれます。
つまり、無料コンテンツは「商品を売るための餌」と考えるより、
「自社が解決できる問題を、最初に一部体験してもらう接点」
と考えた方が自然です。
無料コンテンツと有料商品に一貫性がないと、登録者は増えても商談につながりにくくなります。最初の接点から、自社が解決できる問題へ自然につなげることが大切です。
「教育」は、説得ではなく理解の補助線
ここで、もう一つ見落とされやすいポイントがあります。
リストを集めた後、すぐ商品を案内するだけでは、相手が判断するための材料が不足していることがあります。
経営者向けの商品であれば、なおさらです。
数十万円、数百万円という投資を検討するとき、人は単に「良さそうだから」という理由だけでは決めません。
- なぜ今、この問題に取り組む必要があるのか
- 自社の場合、どこに原因があるのか
- 他の方法では何が違うのか
- このサービスに頼る必要があるのか
こうした点を、自分自身で理解していく必要があります。
だから、メールやLINEでの情報提供には意味があります。
ただし、「教育」という言葉を、相手をその気にさせるための技術と捉える必要はありません。
むしろ、
「判断に必要な情報を、順番に渡していく」
くらいに考える方が健全です。
- 事例を紹介する
- 失敗しやすい構造を説明する
- 自社で確認できるポイントを渡す
- 選択肢ごとの違いを整理する
- そのうえで、必要であれば商品やサービスを案内する
そうすれば、売る側と買う側の双方にとって、判断しやすい状態がつくられていきます。
これは人を操作するための話ではありません。
相手が自分の状況を整理し、納得して選択できるようにするための設計です。
「登録者数」から「事業への貢献度」へ
ここまで考えると、マーケティングの見方も少し変わります。
追いかける数字が、
「登録者数」
だけではなくなるからです。
たとえば、次のような数字も見る必要があります。
- 登録者数
- 商談化率
- 商談数
- 成約率
- 顧客獲得単価
- 顧客あたりの粗利
- 契約後の継続率
特に中小企業では、登録者数を大きくすること自体が目的になる必要はありません。
むしろ重要なのは、
「この集客活動が、最終的にどれだけ事業に貢献しているのか」
という視点でしょう。
100人の見込み客から10件の商談が生まれる仕組みと、10,000人集めても商談がほとんど生まれない仕組み。
表面上の規模は後者の方が大きい。
けれど、経営という観点から見れば、前者の方が扱いやすい場合があります。
登録者数は大切な指標ですが、目的そのものではありません。商談化率、成約率、粗利、継続率まで見て、事業への貢献度を確認することが重要です。
小さなリストでも、顧客理解は深められる
ここで、「では、少人数のリストならいいのか」という話にもなりません。
量も大切です。
事業を成長させるには、十分な接点数が必要です。
ただし、
「量を増やす」
と
「適合性を高める」
は、二者択一ではありません。
最初に顧客像と課題を明確にし、そのうえで必要な規模まで広げていく。
この順番の方が、マーケティング全体の改善点も見つけやすくなります。
そして、登録者が増えたら、その人たちの反応を観察する。
- どのテーマが読まれているのか
- どの相談が多いのか
- どこで離脱しているのか
- どんな言葉に反応しているのか
こうした情報は、単なる「リスト」ではありません。
顧客理解そのものです。
「集めること」から「関係を設計すること」へ
見込み客リストは、名簿ではありません。
そこには、一人ひとりの課題や事情があります。
だからこそ、
「何人集めたか」
だけを見ていると、本当に大切なものを見落とすことがあります。
- 誰を集めるのか
- 何に困っている人なのか
- 最初に何を渡すのか
- どんな順番で情報を提供するのか
- いつ商品を案内するのか
- 購入しなかった人とも、どのような関係をつくっていくのか
この一連の設計が、マーケティングの実態なのだと思います。
数字は重要です。
ただ、数字の奥にいる人を見失わないことも、同じくらい重要です。
短期的に登録者数を増やす施策と、長期的に顧客との信頼関係を育てる施策。
どちらを選ぶかではなく、自社の事業にとって両者をどうつなぐか。
そこに経営者の判断があるのかもしれません。
さて、ここまでを踏まえて、一度自社の集客を振り返ってみてください。
いま追いかけている「見込み客の数」は、実際にあなたの会社が解決できる問題を抱えている人の数と、どれくらい重なっているでしょうか?
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