今日は「リスク管理」の話をします。
経営をしていると、大小さまざまなトラブルが起きます。
それ自体は、ある意味では自然なことです。
ただ、現場を見ていると、ある違和感が残ります。
なぜか同じ種類のトラブルを、何度も繰り返す会社があるということです。
同じトラブルが繰り返される理由
人材の揉め事。
クレーム対応。
納期遅れ。
外注トラブル。
炎上しかけた発信。
もちろん、こうしたトラブルをゼロにするのは難しいものです。
ですが、同じパターンが何度も起きるなら、それは偶然ではなく「構造」の問題かもしれません。
リスク管理が下手な会社は、トラブルへの対応力ではなく、トラブルが起きる場所に居続けていることが問題になっている場合があります。
火消しが得意なほど危ない
経営者の中には、トラブル対応が非常に上手い人がいます。
- 判断が早い
- 動きが速い
- その場で空気を整えられる
一見すると、理想的なリーダーです。
しかし、ここに落とし穴があります。
火消しが得意な人ほど、火が起きる場所を変えないことがあります。
つまり、トラブルが起きても何とかできてしまうので、根本原因に手を入れないまま次へ進んでしまうのです。
リスク管理が下手な会社は“場所”を変えない
たとえば、毎年台風が直撃する土地でミニトマトを育てる人がいるとします。
当然、毎年吹き飛びます。
普通ならこう考えます。
- 場所を変えよう
- 別の育て方を考えよう
ところが、トラブルを繰り返す人はこう考えます。
- 次は台風でも耐えられる支柱を作ろう
- 次はもっと強いビニールを張ろう
努力はしています。
改善もしています。
でも、本質はそこではありません。
そもそも、台風の直撃エリアで勝負しない方がいい。
リスク管理とは、強い対策を打つことだけではありません。
危ない場所に居続けないことでもあります。
取るべきリスクと避けるべきリスクを分ける
多くの経営者が見落としているのは、リスクの種類を分けていないことです。
- 取るべきリスク
- 避けるべきリスク
ビジネスには挑戦が必要です。
挑戦には失敗がつきものです。
ただ、失敗とミスは似ているようで違います。
失敗は、挑戦の結果として起きるもの。
ミスは、防げるのに放置して起きるもの。
リスク管理ができる経営者ほど、失敗は許容しますが、ミスは嫌います。
挑戦の失敗は資産になります。しかし、防げたはずのミスを繰り返すと、信用と時間を失います。
成果を出す力と、事故を起こさない力は別
成果を出す力がある人ほど、スピードが速いです。
勢いがあります。
突破力があります。
ただし、それだけでは会社は長持ちしません。
なぜなら、トラブルが起きた瞬間に信用や積み上げが崩れるからです。
売れる力はある。
しかし、崩れない構造がない。
この状態では、結局またゼロに戻ってしまうことがあります。
トラブルを増やすのは“誰でも歓迎”の姿勢
現場でよく見るリスク増大要因があります。
それが、顧客を選んでいないことです。
売上が苦しい時ほど、次のように考えがちです。
- 誰でもいいから買ってほしい
- 案件がほしいから受けるしかない
- 断る余裕がない
ただ、これは構造的にトラブルが増えます。
価値観が違う人が入れば、期待値がズレます。
期待値がズレれば、クレームが増えます。
つまり、誰でも受けるということは、トラブルを買っている状態になりやすいのです。
期待値を上げすぎると、自分で地雷を埋める
トラブルを生む要因として、もう一つ大きいのが期待値です。
たとえば、次のような表現があります。
- 絶対に満足させます
- うちは最高です
- 人生が変わります
こうした表現は、相手の期待値を一気に引き上げます。
すると、少しでもズレた瞬間に不満が生まれます。
本当は良い商品でも、「思ったほどじゃなかった」が発生した瞬間に、評価は急落します。
少し皮肉ですが、期待させすぎる会社ほど、クレームを自分で作っていることがあります。
対策1|リスクを見える化する
リスク管理というと、難しい仕組みを想像しがちです。
しかし、最初はシンプルで十分です。
- 発生確率|高・中・低
- 影響度|大・中・小
この2軸で、3×3のマスを作り、リスクを書き出します。
これだけでも、本当に危ないものと、気にしなくていいものが分かれてきます。
リスク管理が苦手な会社ほど、危険度の高い問題を放置し、どうでもいい不安に時間を使います。
対策2|標準化と変化点の記録
次に効くのが、業務の標準化です。
整理・整頓・清掃・清潔・しつけ。
いわゆる5Sです。
地味ですが、トラブルを減らす土台になります。
そしてもう一つ重要なのが、変化点管理です。
- 人が入る
- 外注先が変わる
- 新規事業を始める
- 業務フローが変わる
こういう変化が起きる時は、トラブルが起きやすくなります。
ならば、その都度、何が起きたか、何が原因だったかを記録しておく。
それだけで、次の事故は減ります。
対策3|ヒヤリハットを放置しない
重大事故の前には、小さな異常があります。
- ギリギリだった納期
- 違和感のある顧客
- 危うかったコミュニケーション
- 確認漏れになりかけた作業
これを「まあ大丈夫だった」で終わらせない。
小さな異常を記録し、次に活かす。
この積み重ねが、会社を強くします。
会社の未来は、大きな事件ではなく、日々の小さな異常をどう扱うかで決まります。
豪快さと繊細さは両立する
経営には挑戦が必要です。
攻めなければ伸びません。
ただ、攻めるだけでは崩れます。
料理と同じで、豪快さだけでは成立しません。
繊細さがあって初めて、勝負が形になります。
売上を伸ばす経営ほど、同時に「壊れない設計」をしていることが多いのです。
本当のリスク管理とは何か
これは人を操作するための話ではありません。
短期的に効く方法ほど、長くは続きません。
トラブル対応が上手いことは、能力です。
ただ、それが続くと「対処すること」が習慣になります。
しかし、本当のリスク管理は、トラブルをうまく処理することではありません。
トラブルが起きやすい場所で戦わない選択を増やすことです。
あなたの会社では今、避けられたはずのリスクを努力でカバーしている場面はありませんか。
それは本当に挑戦の失敗でしょうか。
それとも、仕組みで防げたミスでしょうか。
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