商品を作った。時間もかけた。ヒアリングもした。
それでも売れない。
この状況は珍しくありません。
むしろ、真面目に顧客と向き合っている人ほど、この沼にハマりやすい印象があります。
顧客の声を聞くほど売れないことがある
「お客さんの声を聞け」
「ニーズを調査しろ」
「顧客目線が大事」
たしかに、どれも正しい考え方です。
ただ、ここには一つ落とし穴があります。
お客さんの声を聞くほど売れない、という矛盾が現場では普通に起きるのです。
顧客の言葉を集めることと、顧客の本音を理解することは同じではありません。
顧客の声を聞いているのに売れない理由
たとえばアンケートを取ると、次のような回答が返ってくることがあります。
- 安くて品質の良いものが欲しい
- 使いやすいものがいい
- 短時間で成果が出ると嬉しい
どれも間違いではありません。
ただ、それをそのまま信じて商品を作っても、なぜか売れないことがあります。
ここで重要なのは、顧客が嘘をついているかどうかではありません。
本人も気づかないレベルで、本音と説明がズレているという点です。
人は本音ではなく、後付けの理由を語る
人は、自分の行動理由をあとから整えます。
購入した後に、
- 必要だと思ったから
- コスパが良かったから
- 機能が優れていたから
と説明することがあります。
しかし実際には、もっと前に、一瞬で「欲しい」「いらない」が決まっていることも少なくありません。
説明が刺さったから買ったのではなく、刺さる空気ができていたから説明が通った。
順番が逆なのです。
論理で勝負しても売れないことがある
顧客は商品を見た瞬間に、買うか買わないかをほぼ判断しています。
その後の説明は、納得するための材料として使われることが多い。
つまり理屈は、決断の原因ではなく、決断を正当化するための材料になりやすいのです。
- スペックを上げる
- 機能を増やす
- 価格を下げる
- 説明文を丁寧にする
これらを頑張っても、売上が動かないことがあります。
むしろ説明を増やすほど、顧客の脳は疲れていきます。
現代は情報が多すぎるため、人の頭は基本的に拒否モードになりやすい。
そのため最初の反応は、だいたい「NO」になりがちです。
売れない理由は、説明不足ではなく、説明に入る前の感情設計が弱いことかもしれません。
顧客は買いたいが、売られたくない
さらに厄介なのが、人は問題を解決したい一方で、売られたくないという矛盾を持っていることです。
支払いには、心理的な痛みがあります。
「欲しい」と思っているのに、「買わされるのは嫌だ」と感じる。
この矛盾を抱えたまま、顧客は商品を見ています。
だから売り手が、
- これを買ってください
- 絶対に必要です
- 今すぐ申し込んでください
という空気を強く出した瞬間、防衛本能が働きます。
そして、買わない理由を探し始めます。
これは商品の良し悪しではなく、人間の仕組みに近い話です。
顧客の言葉ではなく、行動を見る
では、どうすればいいのでしょうか。
答えはシンプルです。
言葉より行動を見ることです。
人は口では何とでも言います。
しかし、行動には本音が出ます。
- 安いものが欲しいと言いながら、高級ブランドを買っている
- シンプルがいいと言いながら、多機能なものを選んでいる
- 必要ないと言いながら、似た商品を何度も見ている
つまり本音は、アンケートの回答だけではなく、購入履歴や行動履歴に表れます。
ここを見ない限り、建前の市場調査を繰り返すことになります。
BtoBでも同じことが起きる
BtoBサービスでも、同じことが起きます。
現場では、よくこう言われます。
- 導入が簡単なツールが欲しい
- 現場が使いやすいものがいい
- なるべく手間が増えないものがいい
しかし実際に決裁が通る理由は、別にあることがあります。
- 社内で説明しやすい
- 上司に怒られない
- 前例がある
- 他社も導入している
つまり、現場の要望よりも、社内で通しやすい理由の方が意思決定に影響することがあります。
現場の言葉を信じて作ったのに、決裁者が別の理由で止める。
これはよくある構造です。
また、「導入が簡単なものがいい」という言葉の裏には、変化が怖いから難しそうなものを避けたい、という心理が隠れている場合もあります。
これは責める話ではありません。
人間は、そういうものです。
売れる商品は、本音を先に言語化している
結局、売れる商品は「顧客の要望をそのまま叶えたもの」ではありません。
顧客がまだ言葉にできていない欲求を、先に言語化したものになりやすい。
だから売れます。
顧客自身が気づいていないことを、「それです」と差し出されると、人は説明を読む前に納得します。
この状態が作れると、営業もマーケティングも驚くほど楽になります。
売れる商品は、顧客が言ったものではなく、顧客がまだ言えなかった本音を形にしています。
顧客の声を集めるだけでは足りない
商品が売れないとき、多くの人は「もっと顧客の声を聞かなければ」と考えます。
もちろん、顧客の声を聞くことは大切です。
ただし、本当に必要なのは、声を集めることだけではありません。
行動から本音を読み取る力です。
これは人を操作するための話ではありません。
強い考え方ほど、使い方で品格が出ます。
もし今売れていないとしたら、それは品質不足ではなく、顧客の言葉を信じすぎているだけの可能性もあります。
今あなたが「顧客ニーズ」だと思い込んでいるものは、顧客の言葉ではなく、行動と一致しているでしょうか。
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