「お客様を理解しましょう」
ビジネスの現場では、当たり前のように使われる言葉です。 マーケティングの本にも、営業研修にも、ほぼ必ず登場します。
ただ、実際の現場を見ていると、多くの会社が「理解したつもり」で止まっていることがあります。
そして、その理解の材料が“想像”で構成されていることも少なくありません。
顧客理解が「想像」で止まっている
たとえば、現場では次のような仮説がよく使われます。
- たぶんこういう人が買っている
- この業界ならこういう悩みがあるはず
- この価格なら納得されるだろう
- この表現なら刺さるはず
仮説を持つこと自体は必要です。
しかし、仮説のまま商品を作り、仮説のまま広告を出し、仮説のまま売り込むと、少しずつズレが蓄積していきます。
そして成果が出ない理由を、景気や競合、広告費の高騰で説明してしまう。
もちろん、それらも要因になり得ます。
ただ、もっと根本には、顧客の本音を確認しないまま意思決定している構造があるかもしれません。
アンケートを取らない経営は、地図なしで山に入るのに似ています。
アンケートが軽視される理由
アンケートは、多くの企業で軽視されがちです。
- 満足度を測るもの
- 形式的に取るもの
- 取っても大して変わらないもの
こう思われているケースも少なくありません。
しかし実際には、アンケートは単なる感想集めではありません。
売上に直結する意思決定データになり得ます。
なぜなら、アンケートで得られるのは評価だけではなく、顧客の判断プロセスだからです。
- なぜ買ったのか
- 何が決め手だったのか
- 購入前に何を不安に感じていたのか
- どこで迷い、何で納得したのか
売上は、商品スペックだけで決まりません。
最終的には、顧客の頭の中でどう判断されたかで決まります。
アンケートは、その判断の中身にアクセスできる数少ない手段です。
ズレは、努力を無駄にする
たとえば、飲食店の例で考えてみます。
店側が「味が濃いので若い男性が多いはず」と思い込み、若い男性向けの広告やメニュー開発を続けていた。
ところが実際にアンケートを取ると、来店の中心は40代女性。
しかも理由は、味ではなく「清潔で一人でも入りやすいから」だった。
こうしたズレは、決して珍しい話ではありません。
怖いのは、努力がズレた方向に積み上がることです。
広告費も、改善も、商品開発も、すべてが空振りしやすくなります。
本人は頑張っている。
しかし方向が違うため、成果が出ない。
この状態は、経営にとってかなり消耗します。
努力の量よりも、顧客の本音と向き合う精度が成果を左右することがあります。
アンケートの本質は満足度ではない
ここで重要なのは、アンケートの目的を間違えないことです。
アンケートは「満足しましたか?」を集めるためだけのものではありません。
顧客が価値を感じたポイントを言語化するためのものです。
たとえば、次のような質問はよく使われます。
- 当社のサービスに満足していますか?
- 5段階で評価してください
こうした質問は、データとしては整います。
ただ、顧客の本音には届きにくいことがあります。
むしろ、次のような問いの方が、判断の構造が見えやすくなります。
- 友人に紹介するとしたら、何と言って紹介しますか?
- 購入前に不安だったことは何ですか?
- 最後まで迷っていた点は何でしたか?
- 他社と比べたとき、決め手になった要素は何でしたか?
この回答の中には、広告コピーにも、LPにも、営業トークにも転用できる言葉が含まれます。
売上を上げるために必要なのは、高評価よりも判断の言語化です。
アンケートは顧客の迷いを整理する装置でもある
もう一つ見落とされがちなのは、アンケートが持つ副作用です。
質問に答える過程で、顧客自身が自分の考えを整理し始めます。
- 自分は何に悩んでいたのか
- なぜ必要だと思ったのか
- 何が決め手になったのか
つまりアンケートは、情報収集であると同時に、顧客の思考を整える装置にもなります。
ただし、これは人を操作するための話ではありません。
強い仕組みほど、使い方で品格が出ます。
アンケートを取る会社が強い理由
アンケートを継続的に取っている会社が強い理由はシンプルです。
当てるのではなく、ズレない状態を作れるからです。
商品を作る前に、言葉を決める前に、顧客の意思決定データを拾っている。
だから広告が刺さりやすくなり、営業の説明も短くなり、改善も的確になりやすい。
逆に、アンケートを取らない経営は、地図なしで山に入る状態に近いかもしれません。
運が良ければ進めます。
しかし、迷っていることにすら気づけなくなるリスクがあります。
顧客の声を取る会社は、当てに行くのではなく、ズレを減らしながら進んでいます。
まずは数問でいい
大掛かりな調査をする必要はありません。
まずは数問で十分です。
たとえば、
- 買う前に迷っていたことは何ですか?
- 誰かに説明するとしたら、どう言いますか?
- 他社ではなく当社を選んだ理由は何ですか?
- 購入前に知っておきたかったことは何ですか?
この問いだけでも、顧客の言葉が取れます。
そして、その言葉の中に、こちらの思い込みを壊すヒントが混ざっています。
改善より先に、質問を増やす
あなたの事業は今、顧客の声ではなく、顧客を「こうだろう」と想像した言葉で動いていないでしょうか。
もしそうだとしたら、次の一手は改善よりも先に質問を増やすことかもしれません。
広告を変える前に、聞く。
商品を変える前に、聞く。
営業トークを整える前に、聞く。
顧客の言葉を拾うことで、事業の地図は少しずつ鮮明になります。
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