「もっとメディアに出たいんです。」
経営者の方と話していると、そんな言葉を聞くことがあります。
テレビに出たい。雑誌に載りたい。ニュースでコメントを求められたい。
たしかに、メディア露出には大きな価値があります。
「露出したい」が遠回りになる理由
知名度が上がることもあるでしょうし、信頼の獲得につながることもあります。
ただ、その一方で。
なかなか露出につながらない人を見ていると、ある共通点があるように感じます。
メディアに出ることを目的にすると、かえって露出から遠ざかることがあります。
露出したい人ほど、露出から遠ざかる
それは、「メディアに出ること」を目的にしてしまっていることです。
少し乱暴に言うと、多くの経営者はメディアを広告枠の延長として見ています。
- 自社の商品を知ってほしい
- サービスを広めたい
- 会社の存在を知ってもらいたい
もちろん、その気持ちは自然なものです。
ただ、ここにひとつのズレがあります。
メディアが探しているのは、企業そのものではなく、「読者や視聴者にとって価値のある情報」だからです。
たとえば不動産会社の社長がいたとします。
その人が、
「うちの物件は立地が良いです」
と話しても、それは企業の説明です。
一方で、
「住宅ローン金利の変化で、今後の住宅購入行動はどう変わるのか」
を語れば、それは社会的な情報になります。
前者は広告です。
後者は知見です。
メディアが求めているのは、多くの場合、後者なんですよね。
多くの経営者が持っているのに使えていない資産
ここで興味深いのは、多くの経営者が本当は十分な知見を持っていることです。
- 毎日現場を見ている
- 顧客と向き合っている
- 市場の変化を感じている
- 業界の課題も知っている
それにもかかわらず、その知見を「専門性」として扱っていない。
むしろ、
「そんなの当たり前ですよ」
と思ってしまう。
でも、その当たり前こそが、外部から見ると価値になることがあります。
- 魚屋にとって当たり前の魚の目利き
- 採用担当者にとって当たり前の人材市場の変化
- 製造業の社長にとって当たり前の原材料価格の動向
業界の外にいる人から見ると、十分に専門的な情報です。
自分たちにとっての当たり前は、外部から見ると価値ある専門知識になることがあります。
商品を語る会社と、業界を語る会社
これはメディア露出に限った話ではないのかもしれません。
BtoB企業の発信全般にも近い構造があります。
多くの企業は、自社の強みを語ります。
- サービス内容を説明する
- 機能を紹介する
- 実績を伝える
- 価格や特徴を見せる
もちろん必要な情報です。
ただ、それだけだと「売り手の視点」から抜け出せません。
一方で、
- 業界で起きている変化は何か
- 顧客は何に困っているのか
- これから何が起きそうなのか
- 現場ではどんな兆しがあるのか
そんな話ができる企業は、少し違った見られ方をします。
商品を売る会社ではなく、業界を理解している会社として認識されるようになるんです。
視点が変わると、信頼の作られ方も変わる
たとえば飲食店を探しているとき。
「うちは美味しいです」
と言われるより、
「最近の外食市場ではこういう変化が起きています」
と語れる人のほうが、なぜか信頼できることがあります。
これは知識量の問題ではありません。
視点の問題です。
自分の会社を見るのか。
業界全体を見るのか。
視野が少し広がるだけで、発信の価値は大きく変わります。
露出は目的ではなく、副産物かもしれない
もうひとつ見落とされがちなのが、「蓄積」の視点です。
メディアは突然やって来るように見えます。
- ある日、取材依頼が来る
- ある日、出演オファーが届く
- ある日、コメントを求められる
でも実際には、その前段階があります。
- 検索される
- 読まれる
- 引用される
- 記憶される
そうした小さな接点が積み重なった結果として、声がかかることが多いのかもしれません。
つまり、露出はゴールではなく、蓄積の副産物とも言えます。
毎回の発信が直接成果につながるとは限りません。
けれど、その蓄積が「このテーマならこの人」という認識を少しずつ作っていく。
そんな見方もできます。
露出を狙うより先に、「このテーマならこの人」と思い出される知見を積み上げることが大切です。
発信の前に考えたいこと
ただし、ここで注意したいことがあります。
専門家として発信することは、自分を大きく見せることではありません。
相手の判断を奪うための話ではありません。
むしろ、自分の業界をより深く理解するための営みに近いものです。
強い考え方ほど、使い方で品格が出ます。
発信も同じです。
注目を集めることだけを目的にすると、短期的には伸びても長くは続きません。
だからこそ、何を語るか以上に、なぜ語るのかが大切になるのだと思います。
メディアに出る前に、業界を語れる人になる
メディアに出ることを目指すのではなく。
業界について語れる人になることを目指す。
その結果として、取材や露出が生まれる。
そんな順番のほうが、結果的には自然なのかもしれません。
もし今、発信を続けているのに手応えがないとしたら。
あなたが語っているのは「会社の話」でしょうか。
それとも、あなたにしか見えていない「業界の変化」でしょうか。
事業の伝わり方を、
毎朝少しずつ整える。
書人百花では、事業の言葉と導線を整えるヒントを、無料メールレターとしてお届けしています。
良い商品やサービスの価値を、必要な人に届く順番で伝えたい方は、まずは毎朝3分の読みものからご覧ください。
無料メールレターを受け取る

コメント