お客様の声を大切にしている。
ヒアリングもしたし、アンケートも取った。
その声をもとに商品を改良した。
それなのに、なぜか売れない。
真面目にお客様と向き合っている会社ほど、この壁にぶつかることがあります。
原因は、お客様の声を聞いていないことではありません。
多くの場合、問題は「聞き方」にあります。
お客様は、嘘をついているわけではない
「安くて品質の良いものが欲しい」
「使いやすいものがいい」
ヒアリングでは、こうした答えがよく返ってきます。
お客様は嘘をついているわけではありません。
ただ、人は自分の行動の本当の理由を、いつも正確に言葉にできるわけではないのです。
そのため、質問の仕方によっては、本音ではなく「それらしい答え」ばかりが集まってしまいます。
なぜ言葉と行動がズレるのかについては、「欲しいと言ったのに買わない理由」で詳しく触れています。
この記事では、そのズレを越えて本音にたどり着くための、具体的な聞き方を整理します。
ヒアリングで集めるべきなのは、お客様の意見ではなく、お客様が実際に経験した出来事です。
聞き方1 「これから」ではなく「これまで」を聞く
いちばん多い失敗は、未来のことを聞いてしまうことです。
- こういう商品があったら、使いたいですか
- いくらなら買いますか
- この機能は必要だと思いますか
こうした質問に、お客様は親切に答えてくれます。
けれど、未来の自分の行動を正確に予想できる人はいません。答えはどうしても、理想や建前に寄っていきます。
代わりに聞きたいのは、過去の具体的な出来事です。
- 最後にその問題で困ったのは、いつですか
- そのとき、実際にどうしましたか
- ほかに試したものはありますか。なぜやめたのですか
過去の行動には、建前が入り込む余地がほとんどありません。
聞き方2 意見ではなく、場面を聞く
「どう思いますか」と聞くと、返ってくるのは意見です。
意見は、その場の雰囲気や、相手への気遣いで簡単に変わります。
本音に近づきたいときは、場面を聞きます。
- その作業は、一日のどのタイミングでしていますか
- そのとき、誰と一緒にいましたか
- 一番面倒だと感じたのは、どの瞬間でしたか
場面が具体的になるほど、お客様自身も気づいていなかった困りごとが見えてきます。
売れる商品のヒントは、多くの場合、この「言葉になっていなかった困りごと」の中にあります。
言葉になっていない困りごとを、検索や行動から見つけた例は、「売れる商品は顧客の言葉より行動を見ている」で紹介しています。
聞き方3 お金と時間を使った跡を聞く
人が本当に困っていることには、すでにお金か時間が使われています。
- その問題を解決するために、これまでいくら使いましたか
- どれくらいの時間をかけていますか
- 今は、どんな方法で何とかしていますか
「困っている」と言いながら、何の対策もしていないなら、その悩みは優先度が低いのかもしれません。
反対に、手間のかかる方法で何とかしのいでいるなら、そこには大きな需要が眠っています。
本当の困りごとには、すでにお金か時間が使われています。その跡をたどることで、悩みの深さが見えてきます。
聞き方4 BtoBでは「決める人」と「使う人」を分ける
法人向けの商品では、もう一つ注意が必要です。
使う人と、導入を決める人が違うことが多いからです。
現場の担当者は「使いやすさ」を求めていても、決裁者が重視しているのは「社内で説明しやすいか」「前例があるか」だったりします。
現場の声だけを聞いて商品を作ると、最後の決裁で止まってしまいます。
ヒアリングでは、次のことも確かめておきたいところです。
- 導入を決めるまでに、誰が関わりますか
- 社内で説明するとき、何を聞かれそうですか
- 過去に導入を見送ったものは、何が理由でしたか
聞いた言葉は、そのまま記録する
ヒアリングのあとで記録を残すとき、つい要約してしまいがちです。
けれど、「使いにくいと感じている」とまとめた瞬間に、お客様の本当の言葉は失われます。
「毎朝これを開くたびに、ため息が出るんです」
こうした言葉は、そのまま残しておきます。
お客様自身の言葉は、商品づくりのヒントになるだけでなく、そのまま広告やホームページで使える、何より伝わる言葉にもなるからです。
集めたお客様の言葉を、伝わる「お客様の声」に整える方法は、「そのお客様の声、読まれていますか?」で書いています。
聞くことは、相手を理解しようとする姿勢そのもの
ヒアリングの目的は、自分の仮説が正しいことを確かめることではありません。
相手の毎日を、相手の目線で理解しようとすることです。
その姿勢は、質問の一つひとつに表れ、お客様にも伝わります。
お客様の声を聞いているのに売れないとき、もっと多くの声を集める前に、一度だけ振り返ってみてください。
あなたの質問は、お客様の「意見」を聞いていたでしょうか。それとも、お客様が「経験したこと」を聞いていたでしょうか。
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